〜伝説の“パワー・ウォリアー”復活でアニマル・ウォリアーと夢のタッグを結成〜佐々木健介が「健介オフィス自主興行第2弾」を前に、大会に対する意気込みと思いのたけを語ってくれた。
プロレスの中にある“壊しちゃいけないもの”を残していきたい!
――「健介オフィス自主興行第2弾」となる9・1ディファ有明大会が迫ってきました。
健介 2月11日にやった旗揚げは成功した部分もあるけど、反省点もあるんで、それを踏まえてフロントの人たちには「選手が試合をやりやすい場を作ってあげよう」という気持ちがあるし、選手は選手で、そのリングの上でどれだけの闘いが見せられるかっていう勝負だと思うんですよ。両方が気持ちよくやるためにはフロントと選手がガッチリとひとつになってないとできないんですよね。
――旗揚げ戦から7ヵ月…途中の6月3日には道場マッチがありましたけど、興行を乱発しないで2回目に当たるというのは、それだけひとつひとつの大会を大事に考えているんだなと思います。
健介 見栄で興行はできないと思っているんですよ。確実にやっていきたいと思っているんで。今度、(山口)竜志がデビューする。ウチにはあと2人いるけど、まだプロテストが終わっていない段階なんですよ。そういう現状だから確実にちょっとずつ進んでいくべきじゃないのかなと。
――今回は中嶋選手がメインを取り、山口選手がデビューする…そうやって毎回ステップアップを見せられる形で興行を行なうのが理想ですよね。でも所属選手3人というのは相変わらず日本一小さい団体ですね(苦笑)。
健介 ワッハッハ。そうですね。今の時代、プロレスラーになろうとしたら簡単なのかもしれないですね、ある意味。これだけ多くの団体があればね。でも俺は、自分が育ってきた空間が好きだった。厳しい練習と激しい試合と緊張感がある毎日が好きだったんですよ。それがプロレスラーだと思ってやってきたんですよね。今、それを変える必要もないのかなって。大事な部分はちゃんと残しておかないと。世界遺産だってそうじゃないですか。大事なものはちゃんと残しているじゃないですか。壊しちゃいけない部分がプロレスの中にもあると思うんですよ。そういうのを大事にしていきたい。そして、そういうものの影響を受けて強いプロレスラーが生まれる。俺、そう思っているんですよね。楽しいことも必要、笑うことも必要です。だけど、楽しいばかりでも駄目だし、そこにしっかりした芯がないと。それはもう、今現在、団体の上に立っている人間たちがしっかり見極めていかないと道を見失ってしまうんじゃないかと思いますね。俺が子供の頃に見ていたプロレスっていうのは「怖くて凄いな!」って。その一方では華やかな選手もいたし。そういうプロレスを見て育ってきたから、そのプロレスの意気込みを、伝統を受け継がないと将来が怖いですよ。いろいろなタイプの人間がいると思うんですよ。だけど、それぞれが常に本物を見せていかなきゃ駄目だと思いますね。だから、その本物を見せられる人間を育てていくしかない。今は勝彦、竜志だけですけどね。こいつらを本物にしていきたいなという夢がありますね。
9・1は、盟友・故ホーク・ウォリアーに捧げる大会!
――今回の大会は健介選手個人としても03年10月18日に亡くなったホーク・ウォリアーに捧げるという大きなテーマがあると思うんですが…。健介選手はフロリダとミネソタで行なわれたホークの葬儀に自費で飛んで行きましたよね。その時、アニマル・ウォリアーと抱き合っていた写真が印象に残っているんですが、そのアニマルとヘル・ウォリアーズを結成することになりました。
健介 俺、ホークに関して言えば、三回忌が終わって…「俺は元気だよ!」っていうのをホークに見てもらいたい。そこにアニマルもいてほしい。ホークの葬儀の時にアニマルに「俺とタッグを組もう」って言われたんだけど、その時はまだそういう気持ちにはなれなくて。でも三回忌が終わって気持ちに一区切りがついたから、俺たちの姿を見せたいなっていう思いだけですね。ホークの性格上ね、しみったれたセレモニーなんか望んでいないと思うんですよ。ただ「アニマルとケンスキーが暴れている姿を見たい」っていうだけじゃないですか、きっとあいつの中じゃ。だからホント、ウォリアーズであり、ヘル・レイザーズの世界を見たいだけだと思うんですよ。だから俺たちの暴れている姿が天国のホークに届けばいいと思っています。
――健介選手とホークがタッグを結成したのは92年11月のミネアポリス…その年、健介選手は左足骨折からカムバックして再起を期していた時だったし、ホークはホークでアニマルの長期欠場でウォリアーズを解散している時期だったから、2人のタイミングが合っていたんでしょうね。運命的な結びつきというか…。
健介 俺、アメリカに行っている時だったんですよ。で、マサ(斎藤)さんから電話がきて「ホークが組みたいって言ってるけど」ってことだったんでミネアポリスに会いに行って、飯食って、酒飲みながら話をしてたんですよね。それでとりあえず組んで試合やろうってことになって、ミネアポリスのバーのボロボロのリングで試合をやったんですよ。今まで自分が住んでいた世界と違う空気を吸ったような感じがしたんですよ。「えっ? 何かあるのかな? やってみようかな!」って気になって、そこからスタートだったですね。
――相手は、それこそ暴れ甲斐のあるブードゥー・マーダーズの近藤&YASSHIですから楽しみですね!
健介 去年の夏(7月3日)の大田区でYASSHIが俺のパワー・ウォリアーをパクッてヤッシー・ウォリアーかなんかで出てきたんだよねぇ(苦笑)。実は、あの前の日に左眼の眼窩底骨折をやっちゃっていて。その後の試合スケジュールがあったから心配かけないためにも公表しなかったんだけど、午前中、病院に行って眼に麻酔して、下からピンセットで眼の筋肉をガッと持ち上げてもらう応急処置をしたんだけど、駄目で。その状態でやったけど、ダブった眼にもあのヘンテコなヤッシー・ウォリアーが見えたからね。「パワーのマネしてんのかよ!?」って、もう頭にきちゃってボッコボコ(苦笑)。近藤の方もアニマルのマネをしたって聞いたんですけどね。まあ、これも何かの縁で…アニマルと2人で徹底的にやっちゃうしかないなと(苦笑)。
――パワー・ウォリアーの登場は2000年5月5日の福岡ドームにおけるグレート・ムタ戦以来、7年ぶりになりますが、以前とは違うんですか?
健介 何とも言えないなあ。ハッキリしてることは…後ろ髪がないことですね(笑)。ペイントはね、少し変えますね。
メインは中嶋勝彦に託す!
――でも今回のメインを務めるのは中嶋勝彦選手なんですよね。
健介 それは俺も望んだことなんですよね。健介オフィスの最後は凄い試合で終わってほしいという期待も込めてね。俺が欠場中もあいつはひとりで全日本プロレスに上がって戦っていた。その経験って凄いと思うんですよ。いつも横にいた俺がいない、誰にも甘えられない、その中で10代の子供が大人の世界で戦い、生活していく。やっぱね、日頃、みんなに接していても緊張感がちょっと違うと思うんですね。そういうのが練習にも出るし、試合にも出るし、よかったのかなって。だから今、タッグを組んでいても、俺が怪我する前の勝彦と今の勝彦では全然違いますよ。「ああ、しっかりしたなあ」っていう安心感があるんですよね。渕(正信)さんも「健介、中嶋は大丈夫か?」って最初は心配していたけど(笑)。日々変わってこれたから今の勝彦があるし、今回もメインを任せられると思います。
――しかし相手は今絶好調、しかも190センチ、145キロの超大型の森嶋猛(プロレスリング・ノア)選手! 強敵ですね。
健介 やっぱりジュニアの選手との戦いも大事だけど、その先のヘビーを見てもらいたいっていうのがあるんで、そういう選手とやらせたいし、勝彦もやりたかったんじゃないかな。いつもやってる選手とは違う、初めてやる選手っていうのは緊張度が違うんですよ。それもひとつの狙いというか、勝彦をもう一皮剥かなきゃいけないっていう気持ちですね。勝彦にしても、それを望んでいると思うんですよね。最近のあいつは甘えがなくなってきたから、常に自分をどう追い込んだらいいかっていうのを考えるようになってきたんですよ。それがあるから、次の竜志にしても、いい影響を受けているしね。入ったばっかりの頃と今の竜志の顔が全然違うんですよ。まだ半年ぐらいしか経っていないのに。それだけあいつは頑張ってきた。でもそれはひとりで頑張ってきたんじゃなくて、俺たちもいるけど、いつも一緒に生活している勝彦の背中を見て成長していると思うんですよね。
健介オフィス生抜第1号・山口竜志はデビュー戦で怪物と激突!
――その山口竜志選手は健介オフィス生え抜き第1号になりますね。
健介 だからこそ、敢えて諏訪魔という厳しい相手をデビュー戦でぶつけることにしたんですよ。諏訪魔が全日本の本隊にいた頃、あいつの七番勝負でやった(05年2月16日)んだけど、実は渕さんから「あいつを厳しく叩きのめしてくれるのは健介しかいないから」って言われて試合が組まれてね。あの時の渕さんの気持ちと一緒ですね、今、諏訪魔に望むのは。現在は全日本のリング上で敵対しているけど。
――あの健介選手との試合後に諏訪魔選手は「何も通じない」って号泣したんですけど、その後、ブードゥー・マーダーズに入ってから逞しく成長しましたからね。
健介 いい試合だけがいいデビュー戦じゃないんですよ、俺の中では。凄くきつくてもいいと思うんですよ。そのきつい中で何かを自分の心に残したら、いいデビュー戦だと思うんですよ。カッコ悪くたっていい、次の試合につながる何かを掴んだ試合っていうのは違うんですよ。そういうデビュー戦を望みたいですね。素質、素材はいいと思うんですよ。だけどそれだけだったら、いつか潰れますよ。そうならないためにはどうするか? 本当に強い芯を持つしかない。だから敢えて諏訪魔を選んだし。
――健介オフィスでデビューするのは大変だと思います。「プロレスラーは誰にでもなれるものじゃない」っていつも言ってますもんね。
健介 多分、ウチはどこよりも厳しいですよ。これは自信を持って言えますからね。新日本の時は十何年、若手の面倒を見てきたしね。天山とか金本とか小島…ずっと見てたから。それからずっとだから。そこには俺の求めるものがあるんですよ。レスラーっていうのは簡単になれない、厳しい練習を乗り越えてプロレスラーになるんだっていうのがずっとあったし、今も変わらないし。だからといって若手だけにやらすってことはしなかったですからね。一緒にやったから、同じメニューを。でね、そいつのことが好きじゃないと出来ないですよ、ハッキリ言って。そいつのことを真剣に思わないと、厳しくなれない。誰だって嫌われ役はやりたくないですよ。こいつを何とかしてあげようと思わなきゃできない。それは今も変わらないですね。
――山口竜志選手が、どれだけの厳しい練習を乗り越えてデビューに漕ぎ着けたのか、期待したいですね。さてオープニングは…なまずマンが増殖して登場。これは楽しい試合になりそうですね。
健介 やっぱもう、こういう埼玉県の吉川という土地に根を張ってやっているわけですから、吉川ならではの何かが欲しかったんですよ。タイガーマスクみたいにカッコよくはないですけど(苦笑)いいじゃないですか。吉川はなまずの里なんで(苦笑)。なまずマンの魅力を来たお客さんにわかってほしいですね。まあ、吉川になまずマンの銅像が建つくらい有名になってほしいと思いますよ(笑)。
――今回、4試合がラインナップされましたけど、普段、いろいろな団体に上がって、いろいろな選手を見ているから、マッチメークもアイデアが湧くんでしょうね。
健介 そうですね。フリーになってから、もう十何団体上がりましたけど、そういう中でいろんな選手を見てきたし、それぞれのいいところがわかっているから、こういうカードが組めるのかなとは思いますね。それと同時に北斗もマネージャーという立場で見てきているしね。
健介興行をきっかけに、プロレスに興味を持ってもらえたら!
――いつも北斗さんのお客さんに対する心配りには感心していますよ。
健介 いろいろ考えていますけど、子供たちに休憩時間中のリング開放はやりますよ。普通の人にはリングってどんなものかわからない。ロープをワイヤーじゃなくてゴムだと思っている人もいるし、リングが凄く柔らかいと思っている人もいるだろうし。リングを開放することによって子供なりに感じる部分があると思うんですよね。オモチャでも、何にしても触って理解するわけじゃないですか、子供は。そういうのも成長過程の中で必要かなと。みんながプロレスラーになるわけじゃないけど(笑)、「ああ、こういうものなんだ」って子供なりに理解してもらいたいなって。少しでもプロレスに興味持ってもらえたら嬉しいですね。
――では最後に、会場に足を運んでくれるファンの人たちに何を見てほしいですか?
健介 今回だけじゃなくて、成長過程をずっと見ていてほしいですね。佐々木健介という木は大きいかもしれないけど、健介オフィスという木は植えたばっかりの苗木じゃないですか。その木がどう育つかを見届けてほしいと思いますね。1回1回の興行の時に、その木がどれだけ大きくなったのか、どれぐらいみんなが道場で頑張ってきたのかを見てもらいたい。やっぱり木にしても年輪が大事じゃないですか。年輪を重ねていって、本当に日本一の木になりたいなって。まだまだ吹けば倒れるようなものかもしれないけど、どんな台風がきても、吹雪が吹いても、折れないような若手を育てていきたいですね。初々しい野郎どもがいる、育っていく団体なんで(笑)一緒に成長過程を見ていてってほしいなっていう気がします。「あんなガキんちょだったのが、こんなに凄くなったよ」って。俺自身もファミリーでやっているから、我が子の成長を見るようで楽しいですよ。